三重県の医療を取り巻く環境
医師数(人口10万人対)は全国平均に比べて少ない数となっており、特に病院勤務医においては145.5人と、全国平均の176.2人より少なく、深刻な医師不足の状況にあります。診療科別では内科、外科、小児科、麻酔科等、主な診療科において全国平均を下回っており、医師の確保が求められています。
こうした状況のなか、過去10年間の医師数(人口10万人対)の増加数は全国平均を上回る9位となっており、また50 歳未満の病院勤務医に占める女性医師の割合も同様に増加傾向にあります。
また看護師の従事者数(実人数)は18,910人(令和4年現在)と全国平均を上回っていますが、津区域・松阪区域以外の区域では全国平均を下回っています。特に、伊賀区域や伊勢志摩区域(伊勢市を除く)、東紀州区域で看護師の数が少なく地域偏在が生じています。
就業場所としては病院が最も多く、全体の63.5%を占めています。
県内の医療施設数は、「病院」93 施設、「一般診療所」1,526 施設(令和4年10月現在)となっており、近年、一般診療所は横ばい、病院は減少傾向にあります。
医療施設数(人口10万人対)について、一般診療所は全国平均を上回っていますが、病院は全国平均を下回っています。病院の病床数(人口10万人対)を種類別にみると、精神病床を除いて全国平均を下回っております。
医師数(人口10万対)
34位
令和4年末時点
看護師数(人口10万対)
32位
令和4年末時点
助産師数(人口10万対)
39位
令和4年末時点
二次医療圏と構想区域
本県には北勢、中勢伊賀、南勢志摩、東紀州の4つの二次医療圏があります。また南北に長い地形を有し、一定の人口規模を持つ都市がほぼ長軸方向に分散して存在することや、在宅医療など、より地域に密着した医療のあり方に係る議論が求められることから、二次医療圏をベースとした8つの構想区域を設定しています。
北勢医療圏
医師数(人口10万人対)は、増加傾向にありますが、三重県平均(241.2人)に比べて少ない状況にあります。中でも、いなべ市、東員町、菰野町、亀山市は医師少数スポットに設定されており、キャリア形成プログラムに基づく地域枠医師等の派遣調整等、 医師偏在の解消に向けた取り組みが進められています。
看護師・准看護師数(人口10万人対)については、三泗区域・鈴亀区域で全国・三重平均と比べて少ない状況です。
看護師等学校養成所
中勢伊賀医療圏
津市に三重大学医学部附属病院が所在し、医師数(人口10万人対)は増加傾向にあります。県平均も上回る医師多数区域のため、医師少数区域および医師少数スポットへの医療派遣を進めるよう調整しています。一方、伊賀区域の医師数(人口10万人対)は県内で最も少なく、医師確保が喫緊の課題となっています。
看護師・准看護師数(人口10万人対)も同様に、津区域では全国平均を上回る数となっていますが、伊賀区域では少ない状況となっています。
看護師等学校養成所
南勢志摩医療圏
医師多数区域に属しますが、松阪市(飯南町、飯高町)、大紀町、大台町、多気町、鳥羽市、志摩市、南伊勢町 については医師少数スポットに設定されているため、地域偏在の解消が必要となっています。
看護師数(人口10万人対)は松阪区域で全国平均を上回っており、県内2番目に多くなっています。また、伊勢志摩区域では県平均の1,085.5人よりやや少ない数となっています。
看護師等学校養成所
東紀州医療圏
東紀州医療圏は医師少数区域に設定されており、圏域内での完結が難しい医療が一定あるため、周辺圏域との連携が重要になります。医療圏内で入院医療を受けた割合(完結率)が約7割と他の二次医療圏に比べて低く、圏外への流出率が高くなっています。
看護師数(人口10万人対)については、当該地域で全国・三重県平均を下回っている一方、准看護師数(人口10万人対)は全国、県内の他区域と比べて、多くなっています。
へき地医療の現状
へき地診療所等で勤務する医師の確保が困難な状況が続いており、現在勤務する医師の高齢化が進む中、今後の後任医師の確保が課題になると予測されます。 へき地の医療提供体制を維持・確保するためには、へき地で勤務する医師の確保のほかに、 へき地診療所で勤務する医師を適正に配置し、例えば、複数の医師のチーム体制により複数の診療所をみるといった、地域を「点から面で支える」医療提供体制の確立が必要です。
三重県では市町が中心となってへき地診療所を設置し、住民に対する医療の提供を行っています。 令和5(2023)年7月末現在、過疎地域や離島にある24 か所の市町立診療所、2か所の国保診療所、2か所の民間診療所をへき地診療所として指定しています。 これら28 か所のへき地診療所のうち常勤医師が勤務する診療所は17 か所であり、その他の診療所は兼任管理や巡回診療等により診療が行われています。 また、県が指定するへき地医療拠点病院は、令和5(2023)年8月現在、紀南病院、尾鷲総合病院、県立志摩病院、伊勢赤十字病院、済生会松阪総合病院、松阪市民病院、松阪中央総合病院、県立総合医療センター、県立一志病院、ヨナハ丘の上病院の10 病院です。
へき地医療を支える仕組み
へき地医療支援機構
平成15(2003)年度に設置したへき地医療支援機構には、へき地医療勤務経験のある医師を専任担当官として配置し、年度ごとのへき地医療に係る事業の実施や各関係機関との連携や連絡調整を行い、へき地における医療提供体制の整備を支援しています。
県が指定するへき地医療拠点病院では、三重県へき地医療支援機構の調整のもと、無医地区等への巡回診療およびへき地診療所等への代診医派遣等を行っています。代診医派遣は、へき地医療機関に勤務する医師がスキルアップのために研修に参加する、休暇を取得してリフレッシュするなど、医師のキャリアアップやモチベーションの維持等、ひいては、へき地の医療提供体制の維持・確保等のために重要な事業となっています。
三重県版医師定着支援システム(バディホスピタルシステム)
医師不足地域に対する診療支援のため、平成21(2009)年度から、医師不足地域の病院(へき地医療拠点病院を含む)に対して、他地域の基幹病院から一定期間医師を派遣する取り組みを実施しています。平成21(2009)年10 月以降、伊勢赤十字病院から尾鷲総合病院へ常勤医師1人が継続して派遣されています。
三重医療安心ネットワーク(地域医療連携システム)
県と三重大学が連携し、安全・安心かつ切れ目のない医療提供体制の充実、病診連携の推進をめざして整備が進められています。令和5(2023)年6月末現在、7か所のへき地診療所が、患者の同意を得た上で、薬の処方、血液検査の結果、レントゲンやCTの画像といった医療情報を閲覧できる施設としてネットワークに参加しています。