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救急外来から集中治療までワンチームで診療する
愛知県で生まれ育ち、三重大学医学部を卒業しました。初期研修から三重大学医学部附属病院救急科に所属し、主に集中治療に携わっています。当科は救急外来から集中治療室まで一気通貫体制で患者さんを治療していることが特徴です。
救急の道へ進んだ理由は、救急車で運ばれてくる患者さんを受け入れる救急外来、いわゆるERの仕事に興味を持ったからです。その中で、重篤な患者さんが少しずつ自分で生きる力を取り戻し、元気になっていく姿を見ることがうれしくて、やりがいを感じるようになりました。大学病院で勤務していると救急にはさまざまな患者さんが運ばれてきます。受け入れて振って終わりではなくどう治療するか考える集中治療も重要な役割です。その中で経験を積むうちに患者さんの回復を身近に感じられる集中治療領域にのめり込み、今は集中治療に軸足を置いています。
救急医療の核の一つはコミュニケーション
地域の基幹病院として、三重大学医学部附属病院高度救命救急・総合集中治療センターには時間を問わず多くの患者さんが運ばれます。高度医療を提供する三次救急を担当する医療機関はやりがいがある反面、医師の負担が大きいといわれることもありますが、当科では看護師、臨床工学技師、薬剤師など多職種が専属で常駐し、私たちと一体となって患者さんに対応しています。また、救急救命士が救急外来やICUに常駐して診療を補助する取り組みも始まりました。彼らの働きは非常に頼もしく、今ではチームに欠かせない存在です。
このように一刻一秒を争う場に多職種や他科のチームも関わる救急のチーム医療は、それぞれが対等に意見を出し合い、連携することがカギとなります。チーム医療、多職種連携はどの地域でも取り組みが行われていますが、三重大学医学部附属病院では救急医療の医師教育の核の一つとしてコミュニケーションを挙げています。私も意見を出しやすい環境づくりやお互いの理解を深めて信頼関係を築くことは、重症患者の診療や医療安全向上の重要な施策になると考えています。
こういった連携は難しいように思われるかもしれませんが、三重県は比較的医師と患者、教授と学生の壁が低く、コミュニケーションが取りやすい土地であると感じます。コミュニケーションを取ることを意識すれば関わる職種や人数が多くても連携するのはそれほど大変なことではありません。私は三重県外の病院も経験していますが、ここは同僚、先輩方、職員さん、患者さんも含めて心の通ったやり取りがしやすい場所だなと感じています。
さらに今、大学が力を入れているのは救急救命士によるドクターカーの運営です。地域による医療機会の格差をなくし、皆に平等に高度な医療を提供する状況作りを行うとともに、医師の負担軽減を目指すものです。人口減少や高齢化が進んでも安心して住んでもらえる地域をチームで支えます。チームワークで「命を救いたい」と思う人がいらっしゃったら、ぜひ三重県の救急医療を見学に来てほしいです。
子育ても大切にしながら、キャリアアップはできる
24時間365日稼働する救急の現場ですが、当科は3交代のシフト制(看護師は2交代)が取り入れられており、チーム内の連携も円滑にとれているため、自分の退勤時間がくるとすぐ帰ることができます。引き継ぎに時間を取られることもなく帰れるため、予定も立てやすく、育児中でも時間管理がしやすいです。オンオフの切り替えがしっかりできる職場環境だといえます。勤務時間は目の前の患者さんを救うことに集中し、退勤した後はチームメンバーに任せて、安心してプライベートな時間を過ごすことができます。
私は2016年と2018年に出産し、別の病院に勤める医師の夫と協力して2人の子どもを育てています。使った制度は産休・育休のほか、子どもが小学3年生になるまで使える時短制度をフル活用しています。その他にも家族の事情に合わせて何度も働き方を変えています。週に3日だけ勤務する期間があったり、夜勤を免除してもらったり、子どもの夏休みだけ勤務を減らしてもらったり。その時々で病院に相談するのですが、柔軟に対応していただき、感謝しています。
私が夜勤を免除されれば他の医師の夜勤が増えることになるので申し訳ない気持ちでいっぱいになるのですが、周囲の理解があるおかげで、嫌な思いや疎外感を抱いたことはありません。それぞれが希望を出してオフを取っているため、「お互い様」の空気感があるからだろうと思います。子どもが熱を出して急に休むことになった日などは心がギュッとなって「本当に申し訳ないです」と伝えるのですが、他の先生方から「自分たちも体調不良でいつ急に休むかわからないから大丈夫」と声をかけてもらえました。日頃からチームワークが良く、誰かに負担が偏りすぎていないからこそお互いを思い合った言葉をかけられるのかもしれません。
出産から復帰までについてですが、1人目は専門医を取る前で医師としては未熟な時期でしたし、仕事が好きなのでできる限り早く復帰したいと思っていました。けれど復帰してみると周囲と比べて休んでいた自分は遅れていると感じ、辛くなって、仕事を辞めたいと思ったこともありました。そんな時、職場の方々や友人に相談する中で考え方も変わり、できることをやればいいんだと吹っ切れたことで今まで続けてくることができました。2人目が生まれてからは働き方を病院と相談し、あまり無理をせず家庭の状況に合わせた勤務をしています。
産後の医師としてのキャリアを不安に思う方がいらっしゃるかもしれませんが、上司や同僚と相談しながらその時の自分にできることをしていれば必ず追いつけます。私は子育てをしながら大学院にも行きました。進学した理由は上司からの助言だったのですが、子どもがいてもできるような研究内容を提案していただき、貴重な機会ですから頑張りました。体力的にハードな部分はありましたが、学びの多い有意義な時間を過ごせました。
自然の中で理想の子育てができている
三重県は温暖な気候であり自然が豊かで、自宅からそれほど遠くない距離に海も山もあります。休日にはキャンプや釣りなど自然の中でできるレジャーを満喫し、生活環境はこれ以上ないくらい満足しています。のんびりとした空気が流れる自然豊かな場所での子育ては、私が思い描いていた理想そのもの。仕事と両立しながら心底満足した子育てができるのは、職場と自然に恵まれたからこそだと思うので、この環境に感謝しながら、今後も医師としてスキルアップし、三重県の医療に貢献していきたいと思っています。
転職や移住を考えながら迷いを抱えている方もいらっしゃると思います。私も当科内に女性の救急医が初めてという環境だったので、身近なところにロールモデルがおらず、働き方を考えるうえですごく不安な時期がありました。それでも三重大学の柔軟な対応のおかげでここまで働き方を変えながら続けてきました。あまり自分の中でハードルを上げ過ぎず、例えば週1回勤務など小さなところから始めていくのもいいのではないでしょうか。将来出産を考える方も、出産後の復帰を考える方も、もし少しでも地域のために頑張ってみようという思いがありましたら、私も皆さんをサポートしたいと思いますので、ぜひ門をたたいてください。
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